不妊症の原因

男性と女性の相性が原因による不妊症

 

 精子と卵子が卵管内で出会い、卵子に精子が入り込むことで受精が成立します。
子宮の入り口の粘液中に精子の運動を止めてしまう抗体
(精子不動化抗体と言います)をもっている方は、
精子が子宮の奥に入っていけないので不妊の原因となります。

 

子宮・卵管に原因のある不妊症

 

 子宮内腔に子宮筋腫が突出しているなどの原因で、子宮が正常な形態や機能を失ってしまった場合は不妊症の原因となります。
両側の卵管がつまってしまっている場合は絶対に妊娠しませんので
不妊の原因となります。
卵管がつまっていなくても、卵管の周囲の癒着により卵管が排卵
した卵子を受け取れない場合も不妊の原因となります。

卵管因子

卵管は精子が卵子に向かい、受精した卵(胚)が再び子宮に戻るための道です。卵管が炎症などによって詰まっていると、妊娠は起こりません。卵管炎や骨盤腹膜炎の原因となるクラミジア感染症にかかったことがある方で、ほとんど無症状のうちに卵管が詰まっていることもあります。また、強い月経痛がある女性の場合、子宮内膜症が潜在していることがありますが、この子宮内膜症の病変によって卵管周囲の癒着が起こり、卵管が詰まっている場合もあります。

頸管因子

子宮頸管は子宮の出口を巾着のように閉めてバリアをしている筒のような部分です。排卵が近づくとその筒の内部を満たす粘液が精子の貫通しやすい状態に変化しますが、この粘液の分泌が少なかったり、精子の貫通に適していなかったりすると、精子は子宮内に侵入しにくくなり、妊娠が起きにくくなります。

免疫因子

人間には、細菌やウイルスなどの外敵と闘い自分を守るための「免疫」という仕組みがあります。異物の侵入を容易に許容しないための大切な仕組みですが、時に「抗体」といわれる免疫の力で精子を攻撃してしまうことがあります。精子を攻撃する抗体(抗精子抗体)を持つ女性の場合、子宮頸管や卵管の中で抗精子抗体が分泌されると、精子の運動性が失われ、卵子に到達できず、妊娠が起こりません。

子宮因子

子宮筋腫や子宮の先天的な形態異常などにより、子宮内膜の血流が悪かったり、子宮内に過去の手術や炎症による癒着などがあると、子宮内に到達した胚がくっ付いて育つことを妨げ、妊娠に至りません。

排卵に原因のある不妊症

 

規則的な月経のある女性の場合は、月経の約2週間前に「排卵」が起こります。排卵とともに女性ホルモンの分泌が変化し、その影響で子宮内膜も妊娠に向けて準備をします。妊娠が成立しなければ子宮内膜は剥がれ落ちて月経になります。

しかし、極端な月経不順の女性の場合、月経のような出血があっても排卵を伴わないことがあります。排卵がなければ妊娠は起こりません。排卵が起こらない原因には、甲状腺など女性ホルモンを出す仕組みに影響を与える病気や、極度の肥満または体重減少、男性ホルモンが高くなるホルモンのバランス異常(多嚢胞性卵巣症候群)などがあり、これらの場合は原疾患を治療したり、排卵を起こす治療をしたりします。また、全く月経がない場合、様々なホルモン分泌の異常やまれに早発卵巣不全(早発閉経)の方もおられます。

排卵しているかどうかは、基礎体温を記録するとわかります。

 

男性に原因のある不妊症

 

 妊娠には、精子と卵子が必要です。そのため、まず最初に子宮内そして卵管内に精子を送り込むことが必要になります。
男性の不妊の原因としては 
1)1mlあたりの精子の数が少ない方  
2)運動している精子の率が低い方
などが考えられます。

男性側に理由がある割合と、女性側に理由がある割合は、ほぼ半々だと言われています。

造精機能障害

精子の数が少ない、または無い、あるは精子の運動性などの性状が悪いと、妊娠しにくくなります。精索静脈瘤で精巣内の温度が高くなっていると、精子の数や運動性が低下します。また、特に原因はなくても精子が作られない場合もあります。

精路通過障害

作られた精子がペニスの先端まで通るための道が途中で詰まっていると、射精はできても精子は排出できず、妊娠に至りません。過去の炎症(精巣上体炎)などにより精管が詰まっている場合などがあります。

性機能障害

勃起障害(ED)、膣内射精障害など、セックスで射精できないものをいいます。一般的にはストレスや妊娠に向けての精神的なプレッシャーなどが原因と考えられていますが、糖尿病などの病気が原因のこともあります。

加齢による影響

男女とも、加齢により妊娠する・させる力(妊孕性)が低下することが分かっています。女性は30歳を過ぎると自然に妊娠する確率は減り、35歳を過ぎると著明な低下を来たします。加齢により子宮内膜症などの合併が増えること、卵子の質の低下が起こることが妊孕性低下の原因と考えられています。

男性は、女性に比べるとゆっくりですが、35歳ごろから徐々に精子の質の低下が起こります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されたら

多嚢(のう)胞性卵巣症候群(PCOS)と診断される基準

①卵巣内に小さな嚢胞(のうほう)が多数見られる方

超音波検査にて診断する

②月経異常があること

無月経、または無排卵が続いている

③ホルモン異常

下垂体ホルモン、または男性ホルモンの異常があること。
 (女性も副腎などから男性ホルモンが分泌されています)

以上の3つが当てはまる方を多嚢胞性卵巣症候群と診断します。
多嚢胞性卵巣の患者さんは、無排卵のことがほとんどで、もし妊娠したいかたは、排卵誘発治療が必須です。

多嚢(のう)胞性卵巣症候群(PCOS)の「排卵誘発治療」

◎軽症の方

最も作用の弱いクロミフェン治療で排卵する方もいらっしゃいます

◎中等度以上の方

注射による排卵誘発治療が必要です。この治療を受けられる方は、毎日、注射を打つ必要があります。そのため、自己注射をするキットも提供されており、当院では、自己注射キットも取り扱っています。


この治療の最大の問題点は、注射の打ち方を間違えると、卵巣過剰刺激症候群という副作用を起こしてしまうことです。
卵巣過剰刺激症候群の方は

  1. 卵巣が腫大したり
  2. 腹腔内に腹水がたまってしまう

というような症状をおこすことがあります。
軽症の場合は経過観察でもいいですが、重症の場合には入院治療が必要な場合もあります。


そのため、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で排卵誘発剤を用いて治療する医師は知識と経験を必要とします。
当院では、多嚢胞性卵巣の治療に関して、十分な知識と経験を備えた医師がおります。
万が一、入院治療が必要になった場合には、提携しております大病院にすぐに入院していただくことが可能です。

原因不明の不妊症

不妊症の基本的な検査を行なっても、悪いところが見当たらずに不妊原因が分からないことがあります。
このような状態を原因不明不妊(unexplained infertility)、もしくは機能性不妊(functional infertility)と呼んでいます。

原因不明不妊で悩む人は不妊症の10~35%と言われています。
しかし「基本的な検査」とは施設ごとによって違い、詳しく調べるところもあれば、簡単に済ませてしまう施設もあります。「10~35%」という幅広い数字はこの辺りが関係して、実際に「腹腔鏡検査」を含めた精密検査をすれば、原因不明不妊は10%程度、もしくはそれ以下になると考えられています。

前の記事へ次の記事へ